トンネルを4つ越えて。

通勤の行きも帰りもトンネルを4つもやり過ごし
西海道談綺を4冊読み終えるには結構時間がかかりました。
日の暮れが早く通勤帰りの車の中は結構暗く文字が読みにくい。

黄昏や 灯りを求め 蛾のやうに

 

文字に光を....。(笑)


松本清張「西海道談綺」1990(文春文庫)新装版の全4巻を読了。
カバーのデザインは月を印象的にあしらったもので素敵ですよ。

文中の金山は明治に発見された鯛生金山がモデルだそうです。

九州にも金山があったなんて〜、今回この本で始めて知りました!

(知らなかったのは私だけでしょうか?)

この本は5年をかけての連載小説と聞き、纏めて読める事に感謝、感謝。

『西海道談綺』は隠し金山を話の中心に据えた、伝奇時代小説です。
清張さんと云うと一般には社会派推理小説の始祖とのイメージがありますが、
それだけではなかったのですね。


大分の耶馬渓にお住まいのさつきさんからのお勧め本です。

話は江戸時代。妻と密通した上司を斬り、妻をも廃坑に突き落して
逐電した勝山藩士・伊丹恵之助。
その後、お茶壷騒動にまきこまれて茶坊主北条宗全と知合い、
その縁で下級武士から直参旗本に。
密命をおび、大分県の日田地方に置かれた天領日田に配属となる。
任務は隠し鉱山の銅の流失探査。
しかし、その地方の隠し金山の秘密を探ることになる。
この物語の舞台、九州日田の西国郡代役所、ここからがやっと始まりといえます。
それにしても、これからからんでくる様々な登場人物はみんな怪しいんです。(笑)

面白いのは、文中に時々筆者が現れること。

この肉声が結構納得ものなんです。


江戸時代の金融の仕組みを事細かに調べ上げたり、
作中に登場する山伏から密教へと話は移り、

その祖先はゾロアスター教まで遡るとの説まで。

連載本を小説にしたことで結構重複部分がしつこさを感じさせなくもないが
エンターティメント感覚で楽しめる作品ですよ。
主人公の恵之助の活躍が最後には尻蕾みでちょっぴり情けない気もしますが....。
でも、たまには時代小説も良いですよ。

そういえば、実写化もされているようですね。

知らなかった〜。

ところで、この解説を書かれた三浦朱門さんは連載ものをボチボチ読むと
欲求不満になるので5年間待って小説化されたものを一気に読んだそうです。
(それでも待ちきれなくてコネを使ったとも書かれているんです、作家の特権?)

 次は火の路、草の径を読んでみよう〜。

火の路にはゾロアスター教の事が詳しく載っているとの事。

またまた秋の夜長に清張さん。